続・ほのぼの日記

いらっしゃいませ!ほのぼのしてもらえるようなエピソード、あり〼

女子寮の恋愛事情

東京のとある町、住宅街の中にたたずむ、3階建。

ハタチ前後の女の子が、共同生活をいとなむ。

そこがわたしたちの家だった

 

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前回、トイレ事情について書いたので、今日は恋愛事情について書こうと思う。

 

pocca-poca.hatenablog.com

 

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大学生にもなれば、彼氏のひとりやふたりもできる。

わたしたちつばめ寮の寮生も、それぞれに面白い恋愛ストーリーを持っていた。

 

 

寮生活をしていて困ることのひとつは、寮に彼氏をよぶことができないことだ。(もちろん全くこまらない人間もいるが、それはいいとする)

外部の人は、お泊まりはおろか、中に足を踏み入れることすらできない。

そもそも同性の友達すら中に入ることを許されておらず、外部の人を見る機会といえば、引っ越しの時に親が手伝うときくらいだった。

 

 

では、どうするか。

彼氏の家に泊まるしかない。

だけど、それにも「外泊届」と呼ばれるものが必要だった。

 

 

これがまた面倒なのだ。

日付、泊まる相手の名前と住所、電話番号、理由をあらかじめ紙に書いて、寮長に提出しなければならない。寮長というのは60代の男性で、自分のことを東京の父親と思えとのたまう、厳格な人だった。だから、彼氏の名前を馬鹿正直に書くバカはほとんどいなかった。かといって嘘の電話番号を書いたら、ふつうにかかってくるんじゃないかとヒヤヒヤものだった。

気になってる人に誘われたからといって、ついていくこともできない。

飲み会がもりあがってそのままカラオケオール、なんてことも許されない。

泊まるなら、事前に、計画的に。

 

 

しかも、外泊届を出せる回数も決まっていた。

月に4回。週に1回。

これが多いのか少ないのか分からないけど、困っている寮生も少なからずいた。

 

 

そういう子は悪知恵を働かせる。

1回の外泊届けで一週間ほど帰ってこないのだ。

 

 

ある日、しばらく見ないなあと思っていた子が、寮長にガミガミ怒られているのを見かけた。一週間ぶりに洋服を取りに帰ってきたタイミングだったらしい。もともとかわいい子だったが、東京暮らしになじむにつれ、どんどんおしゃれになっていた子だった。なかなか垢抜けないわたしは、モデルさんみたいだなあ、なんて思っていた。

 

そんな子が、ふてくされた顔で寮長に怒られている。

「一週間も帰ってこないとはどういうことだ!」

「別にルール破ってないです。ちゃんと外泊届出したじゃないですか」

「こんなのは、寮に住んでることにならん!大事な娘さんを預かっている身として、親御さんに申し訳が立たん!」

 

 

玄関で言い合いをしているので、ひじょうに目立つ。わたしからしたら、月4回の外泊届も多すぎるくらいなので、許されることなら自分の分を分けてあげたい気分だった。

 

それにしても、よく考えつくなあ。

どんな制度やルールにも抜け道ってあるもんだな。

 

覗き見しながら、妙に感心してしまった。

 

しばらくしてその子はつばめ寮から去ってしまったが、きっとお互いのためによかったと思う。寮長も心配で倒れそうだったもの。

そうそう、馬鹿正直に彼氏の名前を書く子がひとりだけいた。その子もよく寮長とぶつかっていたが、しばらくしたら出て行った。ただ彼女は怒られても大して気にしておらず、大学まで遠いしそろそろ出るわ〜なんて言いながら、さっぱりと退寮した。もちろん彼氏の存在もあったかもしれないが、退寮する子はたいてい、大学までの距離、バイト、寮での人間関係のわずらわしさが理由だったと思う。

 

 

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さて、では寮に残るタイプの子はどうなるかというと。

 

 

お互いの彼氏の顔を覚える。

 

 

なぜなら、遭遇してしまうから。大学生にもなると男の子もジェントルマンになるのかしらないけど、夜も遅くにわざわざ寮生を送ってくれるのだ。

 

駅からそこそこ距離あるけどね。

あ、もしかして、できるだけ長い時間一緒に居たかったとかそういう感じかな!?

 

駅から寮まで歩いていると、暗闇でカップルが手をつないでいるところにときどき行き当たってしまう。迂回しようにもできないので、そうっとついていくか、抜かすしかない。

あまりにも盛り上がっているようだと、落ち着くまでしばらく待つ。

 

特に先輩だと気まずいんだなあ。

「〇〇さん、さっき彼氏さんといましたよね、見ちゃいましたフフ」なんて言える子がうらやましかった。

 

 

そのうち勝手がわかってきて、足音をわざと立てれば、ふつうに横を通れることがわかるんだけど、最初のうちは困ったものだ。そもそも夜なので、不意打ちで驚かされることがある。建物の間の暗闇に立ってたりすると、それだけで心臓に悪い。

 

 

 

 だけど、本当に気をつけないといけないのは監視カメラ。

 

 

死角を知らないと、寮長室から丸見えなのである。この事実はだいぶあとになって知った。

新しくきた寮長は、恋愛にもとっても寛容で、門限間近になると監視カメラを観察していたとかいなかったとか。

「おまえ、キッスしとったやないか」

と翌朝からかってくるのである。

 

寮生どころか、寮長にもバレる。

 

 

 厳格だった東京の父も、見てたんだろうか。今になって、ちょっと気になる。

 

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